建物増改築・借地権譲渡の際の承諾料交渉
はじめに
借地上の建物を所有されている場合、通常、増改築禁止特約が借地契約で定められているので、その建物の増改築をする場合は、地主の承諾を得る必要があります。また、借地権付きの状態で建物を第三者に譲渡するときにも地主の承諾を得る必要があります。地主の承諾を得ないで、増改築や借地権の譲渡を行ってしまうと、後々トラブルになるので注意が必要です。ここでは、それぞれの場合に応じて簡単にご説明していきます。
借地上の建物の増改築等の場合
借地契約書には、借地上の建物の増改築等を行う場合には、事前に賃貸人の書面による承諾を得なければならないという特約が記載されていることが多いです。
といいますのも地主(※土地の賃貸人)からすれば、借地上の建物がどのような種類・構造・規模・用途なのかについては借地契約そのものに重大な影響を与えますので、建物の増改築禁止特約が付されることが多いのが実情です。この増改築特約は、解釈・適用範囲が問題となることが多い特約となります。
- ・屋根を全面的に取り替える場合は?
- ・外壁の一部を修理した場合は?
- ・耐震補強工事は?
- ・建物内のリフォームは?
などと様々なケースで禁止されている「増改築」に該当するのかが問題となってきます。そのため、紛争を防止するために、事前に地主と協議して建物増改築等の内容・解釈について合意を得る必要が生じます。
なお、建物増改築等の内容・解釈については、様々な裁判例がでているので、「増改築」に該当するのか否かが不明な場合には、借地契約書を持参の上、一度弁護士に相談した方がよろしいかと思います。
次に、増改築禁止特約に該当するような増改築をする場合、一般的には地主に承諾料を支払って、承諾に関する合意書を取り交わすことになります。この承諾料はどのような工事を行うかによって変わってきますが、更地価格の1~10%程度と言われています。特に改築する場合で、建物の構造を従前の木造から鉄筋コンクリートなどの堅固な建物へ変更する場合は承諾料が高くなる傾向があります。
具体的な承諾料については、当該借地契約の内容、これまでの具体的な経緯等を勘案して決まるので、適正な承諾料についても一度弁護士に相談した方がよろしいかと思います。
借地権譲渡の場合
借地上の建物を使用する必要がなくなった場合、借地権付きのままで建物を売却することがあります。その場合、建物の増改築等の場合と同様、通常、事前に地主の書面による承諾を得ることが必要になってきます。
仮に、地主の承諾なく建物を譲渡してしますと、建物の譲受人は地主から土地の賃貸借契約を解除されてしまうことになり、建物の譲渡人は譲受人から損害賠償請求されるリスクを負うことになります。
そのような事態を防ぐため、事前に地主と協議を行い、地主に承諾料を支払って、承諾に関する合意書を取り交わすことになります。この承諾料は、一般的には借地権価格の10%程度と言われています。ちなみに、借地権価格とは、一般的には当該土地の評価額に借地権割合(都市部であれば60~70%のことが多いです。)を掛けた金額のことを言います。
この承諾料についても、個々の具体的な事情により相場から変動するケースもあったり、また土地の評価額、借地権割合なども問題となるケースもあったりするので、一度、弁護士に相談することをお勧めします。
承諾について合意が得られない場合
では、地主の承諾が得られない場合はどうすればいいでしょうか?
この場合、借地人は、借地の所在地を管轄する地方裁判所に対して地主の承諾に代わる許可の申立てを行っていくことになります(借地非訟事件手続)。
借地非訟事件手続きでは、当事者双方から話を聞いて、裁判所が問題ないと判断すれば、一定の承諾料の支払いを条件に地主の承諾に代わる許可を与えることができます。
地主との交渉が上手くいかない場合にはこの制度の利用をご検討頂くことになります。
最後に
このように、借地上の建物の増改築や借地権の譲渡には専門的な知識が必要になってきますので、これらの問題でお困りの方は、一度、川崎ひかり法律事務所にお気軽にご相談下さい。