地代・賃料滞納による明渡し
地代・賃料の滞納でお困りではありませんか?
地主・賃貸人の皆様にとって、地代・賃料の収入は、事業や生活・資産を維持する上で大変重要なものだと思います。その地代・賃料が滞納された場合、判断を誤ると長期的に大きな損失になりかねません。賃貸借契約を存続させるべきか、それとも解除すべきかの判断を迅速に行う必要があります。地代・賃料の滞納が常習的でなければ、滞納分を支払ってもらえばよいとお考えになるかもしれませんが、地代・賃料の滞納が長期に渡った場合、物件から出ていってもらい、新しい人に貸したいと考えるでしょう。この時の注意点としては、地代・家賃の滞納があったからといって賃貸借(借地)契約の解除が認められるとは限らないということです。借家の場合ですと3~4カ月分の家賃の滞納があると解除が認められることが一般的です。借地の場合は、少なくとも半年以上と言われておりますが、具体的な契約内容やこれまでの履行状況等の具体的な事情が考慮されて決まります。この時点で、一度、弁護士に相談しても良いと思います。それでは、地代・賃料の滞納があった場合、地主・賃貸人はどのような対応をすることができるでしょうか?その場合、どのような手順を踏んで、借地人・賃借人に物件から出ていってもらうことになるのか、ご説明いたします。
地代・賃料滞納による事件の流れ
明渡しまでのフローチャート
明渡しを求める手順としては、
- ①地代・賃料の督促・解除通知
- ②交渉
- ③訴訟
- ④執行
という順序で進めていくことになります。この順序で進める中で、交渉で終わることもあれば、執行まで進めなければ終えられないこともあります。それぞれの段階について、ご説明をさせていただきます。
地代・賃料の督促・解除通知
まず、借地人・借家人に対し、滞納地代・賃料の督促及び契約解除に基づく物件の明渡しを求める通知書を発送する必要があります。この際の通知書は、配達証明付きの内容証明郵便で送る必要があることに注意します。なぜなら、仮に滞納賃料請求・物件の明渡しの裁判をすることになった場合、どのような内容の解除の意思表示がいつ借地人・借家人に届いたのかを裁判上で証明しなければならないためです。催告・解除通知の発送の段階から訴訟になることを見据えて対応する必要があるので、弁護士に依頼するか、最低でも通知内容を弁護士に相談した方が良いと思います。
交渉
そして、この通知の後、通知に定めた期限までに滞納地代・賃料の支払いがない場合は、賃貸借契約が解除により終了したとして、具体的に借地人・借家人と明渡しの交渉を開始することになります。もちろん、滞納地代・賃料を満額支払わせた上で物件から出ていってもらうことがベストではありますが、後述(4)、(5)のとおり、仮に訴訟・執行となった場合、時間と費用が膨れ上がっていく上、早期に新たな借地人・借家人に物件を貸した方が経済的ですので、事案によっては、滞納賃料を減額・免除する代わりに、早期明渡しを求めることもあり得ます。
なお、
- 借地人(賃借人)が物件からいなくなってしまい連絡が取れないケース
- 借地人(賃借人)が亡くなってしまい、相続人が不明なケース
などは、交渉自体が困難ですので、すぐに弁護士にご相談ください。具体的な事案に応じて、ベストな解決方法をご提案させて頂きます。
訴訟
交渉の結果、借地人・賃借人が物件を明け渡してくれない場合は、訴訟を検討します。借地の場合は、建物収去土地明渡請求訴訟を、借家の場合は、建物明渡請求訴訟を起こすことになります。その際に、占有が第三者に移ってしまう危険はないか、借地の場合に建物が第三者に譲渡されてしまう危険がないか等を検討して、占有移転禁止の仮処分や処分禁止の仮処分も申し立てることがあります。そして、訴訟が開始された後は、争点について主張立証を尽くすことになりますが、地代・賃料の滞納については争われることがほとんどないのでそこまで長期化せずに結審することが多いです。また、訴訟の最中に、裁判所が和解を勧め、借地人・借家人と裁判上の和解によって明渡しの合意がなされることもあります。
執行
上記のように、交渉・訴訟によって明渡しを実現できることもありますが、元々明け渡すつもりがない借地人・借家人や、上記のように行方知れずの借地人・借家人の場合には、執行手続まで行う必要があります。執行手続とは、訴訟によって得られた勝訴判決に基づき、強制的に明渡しを行うことを指します。執行手続では、明渡しをするように建物内に公示書を貼り、それでも出ていかない場合、明渡しが実行されます。この際、借家の場合で、借家人の荷物などの動産類が室内に残っている場合、それらの処分をオーナーがしなければなりません。また、借地の場合で、借地上に建物が残っていた場合、建物の解体まで行わなければなりません。建物の解体まで要するとなった場合には、数百万円かかってしまうこともあります。なお、法的にはこれらの費用を借地人・借家人に請求することができますが、実際に回収することは難しいケースが多いです。
まとめ
以上のとおり、地代・賃料滞納による明渡しを求める場合、法的に難しい判断が必要となることが多い上、交渉力が求められますので、できるだけ早期に、不動産の明渡し問題に強い川崎ひかり法律事務所にご相談ください。