死亡慰謝料
1 死亡慰謝料の基準
裁判上で基準となる民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準(いわゆる「赤い本」、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行)2020年版では以下の基準が示されています。なお、本基準は死亡慰謝料の総額であり、近親者固有の慰謝料も含まれたものとなっております。
一家の支柱とは、被害者の世帯が主に被害者の収入に頼って生活をしていた場合をいいます。
・母親・配偶者 2500万円
・その他(独身男子、子供、幼児等) 2000万円~2500万円
ただし、この基準は、具体的な事情に応じて増減されるものであり、一応の目安を示したものとされています。判例においても、扶養家族の数や加害者側の行為態様(飲酒、ひき逃げなど)によって、増額が認められている事例があります。
胎児を死産した場合には、死亡とは扱われずに、母体の傷害についての増額事由になりうるものと考えられています。
判例では、出産予定日の4日前の事故で死産した場合に800万円を認めた事例(高松高判平成4年9月17日)、事故の衝撃で妊娠2ヶ月の胎児が死亡した場合に150万円を認めた事例(大阪地判平成8年5月31日)などがあります。
2 死亡逸失利益の基準
・算定式
なお,算定式の基礎となる金額等の基準は、以下のとおりです。
・基礎収入額の算出方法
ア 給与所得者
原則として源泉徴収票や給与明細によって確認される事故前の収入が基礎となります。ただし,現実の収入が賃金センサスの平均賃金額より低い場合であっても,平均賃金が得られる蓋然性があれば,平均賃金額を基準に判断されます。
イ 事業所得者
自営業者、自由業者などについては、原則として所得税の申告所得が一つの基準となります。
例外として,申告額と実収入が異なる場合には,実収入を立証することができれば実収入額を基礎として判断される可能性がありますが,過少申告事案では,裁判所では厳しく判断される可能性があります。
ウ 会社役員
役員報酬には労務対価部分と利益配当部分があると言われておりますが,労務の対価として評価される部分については認められますが、実質利益配当とみられる部分については認められにくいといえます。
エ 家事従事者
賃金センサスの第1巻第1表の産業計,企業規模計,学歴計,女性労働者の全年齢平均の賃金額が基礎となります。
有職者の場合には,実収入が上記の平均賃金額を上回る場合には実収入によって判断され,下回る場合には平均賃金によって算定されることになります。つまり,家事労働分の加算を認めないのが一般的です。
以上の他、学生や幼児などの無職者、失業中の方、高齢者など、被害者の立場は様々ですが、それぞれについて一定の考え方が示されているところですが、いずれの立場でも、交渉や裁判での主張や立証によって変動する可能性がある部分ですので、是非弁護士に相談されることをお勧めします。
・生活費控除率について
ア 一家の支柱
被扶養者1名の場合40%、被扶養者2名以上の場合30%が基礎収入から控除されることになるのが一般的です。
イ 女性(主婦、独身、幼児等を含む)
30%が基礎収入から控除されるのが一般的ですが、賃金センサスをもとにした平均賃金を基礎収入とした場合には控除率が上がる場合が多いといえます。
ウ 男性(独身、幼児等を含む)
50%が基礎収入から控除されるのが一般的です。
・就労可能年数
原則として67歳までとされております。
67歳を超える方 または67歳までの就労可能年数より平均余命の2分の1の方が長い方については,平均余命の2分の1をもとに算出します。