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生命保険金請求権の持戻しについて(令和4年2月25日広島高裁判決の紹介)

1 広島高裁の判決

広島高裁で、令和4年2月25日、「被相続人を保険契約者兼被保険者とし、共同相続人の1人を死亡保険金の受取人とする生命保険契約に基づく死亡保険金請求権について、民法903条の類推適用による特別受益に準じた持戻しを否定した」判決がでましたので、ご紹介します。

2 平成16年の最高裁決定

死亡保険金請求権が民法903条の類推適用による特別受益に準じた持戻しの対象となるか否かについては、平成16年の最高裁の決定において、養老保険契約の生命保険金の事案でしたが、一定の基準が示されています。
すなわち、平成16年最決は、原則としてこれを否定した上で、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率、保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用によって、特別受益に準じて持戻しの対象となる旨の判断を示しています。

3 広島高裁の判決の事案の内容

この平成16年最決が出された後は、保険金額が遺産総額の3分の1を超えるような場合には持戻しを検討する必要があるというような実務的な文献も出されておりますが、本件の事案は、遺産分割の対象財産は預貯金が合計約459万円であった一方で、死亡保険金合計は2100万円でしたので、3分の1を超えるどころか、圧倒的に保険金額の比率が高い事案でしたが、被相続人の生活実態などを考慮して、持戻しを否定したという点で、実務的に見てとても参考になる判例といえます。

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