足の後遺障害
交通事故による怪我のなかには、関節が曲がらなくなり、交通事故以前よりも関節が動く範囲が限定的な状態(関節に「可動域制限」が残った状態と表現されます。)になってしまうこともあります。
このような関節の「可動域制限」が残った場合のほか、人工関節・人工骨頭など一部の人工物を用いざるを得なくなった場合には、「関節機能障害」として後遺障害の等級認定が得られる可能性があります。
1.下肢の後遺障害の分類
下肢(脚のことです)及び足指の後遺障害については、以下のように分類できます。
(1)下肢の後遺障害
・下肢の欠損障害
交通事故により、脚の全部または一部を失った場合です。
どれだけ失われたか、また、両脚か片脚かによって、認定される等級が異なってきます。
・下肢の短縮障害・過成長
脚のうち一つが、健康な側の脚よりも短くなった場合又は長くなった場合を指します
・下肢の機能障害(人工関節・人工骨頭を含む)
膝関節や股関節、足首の関節が動かなくなったり、動かせる範囲に制限が生じたりした場合(可動域制限)を指します。また、人工関節・人工骨頭を挿入置換した場合も含まれます。
・下肢の変形障害(偽関節や長管骨の変形)
偽関節を残したり、長管骨が変形して治癒したような場合を指します。
・下肢の動揺関節
関節の安定性が損なわれ、異常な関節運動が生じている場合で、硬性補装具を必要とする後遺障害です。
(2)足指の後遺障害
・足指の欠損障害
交通事故により、足指の全部または一部を失った場合です。
・足指の機能障害
足指を動かせる範囲(可動域)に制限が生じた場合のほか、足指の中節骨を切断したような場合などを指します。
2.下肢の障害の後遺障害認定基準
下肢機能障害に関して、認定基準は、以下のように分類されています。
(事例の多いものとして下肢(肩・肘・手)についてのみ以下記載します。)
【下肢の欠損障害】
等級 | 障害の程度 |
1級5号 | 両下肢をひざ関節以上で失ったもの |
2級4号 | 両下肢を足関節以上で失ったもの |
4級5号 | 1下肢をひざ関節以上で失ったもの |
4級7号 | 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
5級5号 | 1下肢を足関節以上で失ったもの |
7級8号 | 1足をリスフラン関節以上で失ったもの |
【下肢の短縮障害・過成長】
等級 | 障害の程度 |
8級5号 | 1下肢を5㎝以上短縮したもの |
8級相当 | 1下肢が5㎝以上長くなったもの |
10級8号 | 1下肢を3㎝以上短縮したもの |
10級相当 | 1下肢が3㎝以上長くなったもの |
13級8号 | 1下肢を1㎝以上短縮したもの |
13級相当 | 1下肢が1㎝以上長くなったもの |
【下肢の関節機能障害】
等級 | 障害の程度 |
1級4号 | 両下肢の用を全廃したもの |
5級7号 | 1下肢の用を全廃したもの |
6級7号 | 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
【下肢の変形障害】
等級 | 障害の程度 |
7級10号 | 1下肢に偽関節を残し,著しい運動障害を残すもの |
8級9号 | 1下肢に偽関節を残すもの |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの |
【下肢の動揺関節】
等級 | 障害の程度 | |
8級 | 常に硬性補装具を必要とするもの | 「用を廃したもの」に準じる |
10級 | 時々硬性補装具を必要とするもの | 「著しい機能障害」に準じる |
12級 | 重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないもの | 「機能障害」に準じる |
12級 | 習慣性脱臼,または弾発膝 | 「機能障害」に準じる |
3.下肢機能障害の賠償額及び労働能力喪失率について
下肢機能障害として設定されている等級に対応した後遺障害の慰謝料及び労働能力喪失率について、裁判所基準は以下のとおりです。
等級 | 慰謝料額 | 労働能力喪失率 |
1級 | 2800万円 | 100% |
2級 | 2370万円 | 100% |
4級 | 1670万円 | 92% |
5級 | 1400万円 | 79% |
6級 | 1180万円 | 67% |
7級 | 1000万円 | 56% |
8級 | 830万円 | 45% |
10級 | 550万円 | 27% |
12級 | 290万円 | 14% |
4.まとめ
下肢(脚)の後遺障害としては、関節の可動域制限が問題となることも多いです。
どの関節のどの動きがどれだけ制限されていれば損害賠償額が増えることになるのか、関節可動域の測定はどのようにしてもらうべきなのかなど、詳細について早めに弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。