耳の後遺障害
耳の後遺障害は、大きく分けて、①聴力②平衡機能障害③耳鳴り・耳漏④耳殻の欠損に分けられます。耳の後遺障害の等級を獲得するためには、問題となる後遺障害に応じた専門的な検査が必須です。必要な検査をした上で後遺障害診断書に結果を記載しなければ、仮に耳の後遺障害が残っていたとしても、後遺障害等級の獲得を逃してしまいまので、必ず交通事故に詳しい弁護士にご相談することをお勧めします。以下、①から④について、ポイントを説明します。
1 聴力
(1)必要な検査
聴力検査として、自覚症状を検査するオージオメーター検査がありますが、被験者の意思でコントロールできない客観的な検査もあわせて受けておくことがポイントになります。
(2)聴性脳幹反応検査(ABR)、アブミ骨筋反射検査(SR)とは?
聴性脳幹反応検査(ABR)は、音による脳の反応を読み取って波形を読み取る検査です。
また、アブミ骨筋反射検査(SR)は、中耳のあぶみ骨に付いている耳小骨筋が大音響で咄嗟に収縮して内耳を保護するという収縮作用を利用した聴力検査です。
いずれの検査も、被験者の意思でコントロールはできない検査です。交通事故により通院している病院で上記各検査を受けることができない場合には、主治医に紹介状を書いてもらった上で、上記各検査を実施している他の病院で検査を受ける必要があります。
(3)聴力に関する等級
障害の程度に応じて、4級~14級になります。
2 平衡機能障害
(1)必要な検査
平衡機能障害は、立ち直り反射検査や偏倚検査が必要となります。
(2)立ち直り反射検査と偏倚検査とは?
立ち直り反射検査とは、姿勢の変化があったときに立ち直る反射、すなわち、体の傾きを正しい位置に修正する働きを検査するものです。
また、偏倚検査とは、眼を閉じた状態で文字を書いたり、足踏みをする動作をすることによって、体の動きに偏りがないか検査するものです。
(3)平衡機能障害に関する等級
障害の程度に応じて、3級~14級となります。
3 耳鳴り・耳漏
(1)耳鳴り
耳鳴りとは、音を感じるような錯覚に陥る状態を言います。
耳鳴りについては30dB以上の難聴を伴うことが必要で、著しい耳鳴りを常時残すことが他覚的検査により立証可能なものは12級相当、30dB以上の難聴を伴い、常時耳鳴りを残すものは14級相当と認定されます。
(2)耳漏
耳漏とは、耳からの膿などの液体が出ることです。
耳鳴りと同様に、30dB以上の難聴を伴うことが必要で、常時耳漏を残すものは12級相当、30dB以上の難聴で、耳漏を残すものは14級相当と認定されます。
(3)共通の検査
耳鳴り、耳漏とも、オージオメーター検査(聴力検査)を受け、オージオグラムを後遺障害診断書に添付しない限り、等級が認定されることはありません。
4 耳殻の欠損
耳殻を2分の1以上欠損した場合には12級となります。