刑事事件
刑事事件の流れ
刑事事件は,通常,次のような流れで進んでいきます。
※だだし,逮捕・勾留などの身柄拘束を受けず,在宅で捜査が継続する場合もあります。
逮捕・勾留について
逮捕とは、罪を犯したと疑われる人(被疑者)の身柄を拘束する処分です。最大3日間、身柄が拘束されます。
勾留とは、逮捕後に引き続き被疑者の身柄を拘束する処分です(被疑者勾留)。勾留期間は原則10日間ですが、やむを得ない事由がある場合(一言で言えば、捜査を継続する必要性があること、です。)には、さらに10日間延長される場合があります。
また、勾留されている被疑者は、通常、起訴された後も勾留が継続することになります(起訴された後は、「被告人」という名称に変わり、被告人勾留といいます。)。
逮捕・勾留された場合の対処について(早期の身柄解放に向けて)
1 勾留の裁判に対する準抗告
勾留の裁判に対して不服があるときは、不服申立て(準抗告といいます。)ができます。証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれがない場合には、勾留の裁判が取り消されることがあります。勾留の裁判が取り消されれば、被疑者は釈放されることになります。
2 勾留延長の裁判に対する準抗告
上記のとおり、「やむを得ない事由」がある場合には、10日間の勾留期間がさらに10日間延長されることがありますが、この勾留延長の裁判に対 し、不服申立て(準抗告)を行うことができます。身柄を拘束して捜査を延長する必要性がないと認められた場合に、勾留延長が取り消されることになります。 勾留延長が取り消されれば、被疑者は釈放されることになります。
3 勾留の執行停止
被疑者、被告人が勾留中であっても、病気治療のための入院、両親、配偶者等の危篤又は死亡、家庭の重大な災害などの事情がある場合、勾留の執行が停止され、被疑者、被告人の身柄が解放される場合があります。
4 勾留の取消請求
被疑者・被告人の勾留の理由又は必要性がなくなったときは、裁判所に対して勾留の取消請求をすることができます。しかし、実務上、後記の保釈請求に比べて、勾留取消請求が認められる数は少ないものとなっております。
5 保釈請求
保釈とは、保釈金の納付等を条件として、勾留の執行を停止し、被告人の身柄拘束を解く制度です。保釈の請求は、起訴された後でなければ行うことができません。
① 法律上の要件を満たしていること
保釈は、保釈不許可事由がないとき、又は裁判官が適当と認めるときのいずれかの場合に認められます。
まず、法律上、保釈不許可事由は以下のものが挙げられています。
ア)被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁固に当たる罪を犯したものであるとき
イ)被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁固に当たる罪につき有罪宣告を受けたことがあるとき
ウ)被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁固に当たる罪を犯したものであるとき
エ)被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
オ)被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき
カ)被告人の氏名又は住居が分からないとき
これらの事情が一つでもある場合には、原則、保釈は認められません。これらの中でも、エ)、オ)について(以下、「罪証隠滅のおそれ等」といいま す。)は、実務上、保釈請求を退ける理由として挙げられることが多く、保釈請求を行う場合には、この「罪証隠滅のおそれ」がないことを具体的かつ論理的に 裁判官に説明しなければいけません。
また、これら保釈不許可事由がある場合であっても、裁判所が「適当と認めるとき」には、保釈が認められます。裁判官からすれば、保釈をすることが
「適当」かどうかを決める際に、最も気になることは、「保釈を認めた後に被告人が裁判にきちんと出頭してくれるかどうか」です。そこで、保釈の請求をする
際には、「保釈されたとしても、きちんと裁判には出頭します」ということを裁判官に納得させなければなりません。
具体的には、被告人には定職があること(身柄の拘束が続けば仕事に多大な影響が及んでしまう。)、家族がいること(自分が子どもの面倒をみなければなら
ず、保釈が認められないと大きな不都合がある。)、信頼できる身元引受人がいること(被告人が逃亡しないように、きちんと監視できる人がいること。通常
は、同居のご親族や職場の方になって頂くことが多いです。)などの事情を裁判官に納得させなければなりません。
② 保釈金を納付すること
保釈請求が認められるためには、保釈金が納付できなければなりません。この保釈金は、被告人が正当な理由なく裁判に出頭しないときに保釈を取り消
し、保釈金を没収するという心理的な強制のもとに被告人の出頭を確保するためのものなので、保釈金の金額は、事件の性質、被告人の資力など、様々な事情を
考慮して裁判所が決定します。
このため、保釈金の金額は、事案によって様々ですが、事件の性質、被告人の資力ともに通常の場合は、150万円程度の保釈金が定められることが多いです。この金額より低くなることはほとんどありません。
なお、保釈金は、判決言い渡し後に戻ってきます。ただし、被告人が保釈中に正当な理由なく出頭しなかったり、裁判所の定めた条件に違反したときなどの場合には、保釈が取り消され、保釈金は没収されてしまい、戻ってこなくなってしまいます。
不起訴・執行猶予について(最終的な身柄の解放に向けて)
これまでに述べたお話は、いわば「一時的にでも身柄を解放する」というものですが、勾留が取り消された場合であっても、その後検察官の起訴・不起訴の判断が待ちかまえていますし、保釈が認められた場合であっても、その後刑事裁判が待ちかまえています。
刑事弁護は、これまでに述べた「一時的にでも身柄を解放する」行動とともに、最終的に検察官から不起訴処分等を受けること、執行猶予付き判決を得るこ
と、実刑になる場合であっても刑を軽くすることなど最終目標を獲得するための準備を平行して進めていかなければなりません。
そこで、以下、不起訴・執行猶予についてお話し致します。
1 不起訴
検察官は、捜査の結果を考慮し、起訴・不起訴を判断します。
捜査の結果、犯罪の嫌疑がない、あるいは不十分であると判断した場合には、不起訴処分がなされ、身柄拘束を受けていた被疑者は釈放されることになります。
また、捜査の結果、犯罪の嫌疑があると判断された場合であっても、被疑者の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状、犯行後の情況などの様々な事情を総合的に考慮し、起訴されない(起訴猶予)ことがあります。
仮に犯罪の嫌疑がある場合であっても、例えば、被害者と示談が成立し、これまでに前科・前歴がない場合であれば、起訴猶予になる可能性があります。ただ
し、被害者と示談するためには、検察官を通じて被害者と接触を試みなければなりませんが、通常、被害者は、心情的な面で加害者側の人物と接触を拒むでしょ
う。この場合、弁護人がついていると、「弁護士になら会ってもいい」と考える方も多いので、示談が成立する可能性が上がります。
2 執行猶予
起訴され、裁判所が有罪判決を下す場合であっても、一定の条件の下、その刑の執行が猶予される場合があり、これを執行猶予と言います。
例えば、「被告人を懲役1年6月に処する。この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。」との判決が言い渡された場合、これは、「本来なら
刑務所に1年6か月入って作業に従事するところを、3年間猶予していったん社会に復帰させ、その間犯罪を行わなければ刑務所に行かずに済む。」という意味
になります。このように、執行猶予が付くか否かで大きな違いがあります。
(初めて執行猶予をつける場合)
①前に禁固以上の刑に処せられたことがないか、又は禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日(又はその執行の免除を得た日)から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがないこと
②3年以下の懲役若しくは禁固、又は50万円以下の罰金を言い渡す場合であること
③執行猶予を相当とするに足りる情状が存すること
以上の①~③の要件を満たしていることが必要です。③については、例えば、被害者と示談が成立しているか否か、被害弁償がなされているか否か、再 び犯罪を行う可能性がある環境にあるか否かなどの要素が考慮され、もちろん、①及び②の要件を満たしていたとしても、③の情状が悪ければ執行猶予はつきま せん。特に、被害者に対して示談あるいは被害弁償が済んでいるか否かは、結果を大きく左右することがあり、示談等は被害者の方との話し合いが必要なために ある程度の時間が必要であるため、できるだけ早い段階、できれば起訴される前の段階で弁護人をつけておくことが望まれます。
(前に執行猶予付判決を受け、執行猶予期間中に罪を犯した場合)
①前に禁固以上の刑に処せられ、その執行の猶予中であること。ただし、その執行猶予が保護観察付きで、その保護観察期間内に更に罪を犯した場合に は、再度の執行猶予は許されない。(しかし、保護観察期間内であっても、保護観察の仮解除を受けている者は、その仮解除が取り消されるまでの間は、保護監 察に付されなかったものとみなされます。)
②1年以下の懲役又は禁固を言い渡す場合であること
③情状が特に酌量すべきものであること
以上の①~③の要件を満たしていることが必要です。しかし、③の情状につき、初めて執行猶予をつける場合に比べ、「特に酌量すべきもの」がなければ再度の執行猶予を付することができないとなっていることから、その条件は非常に厳しいものとなっています。
(保護観察)
初度の執行猶予の場合であっても、事案によって、保護観察という処分が付されることがあります。これは、判決言渡後、保護観察所や保護司の監督に 服することとなり、その際に出される条件を守らないと執行猶予が取り消されて刑務所に入ることになってしまいます。なお、再度の執行猶予の場合には必ず保 護観察に付されることになります。
刑事弁護のご相談について
例えば、ご家族の方が警察につかまった場合や、ご自身が捜査の対象となってしまっている場合、できるだけ早い段階で弁護人をつけておくことが良い結果を得ることが多いです。
当事務所は、無罪判決を得た経験のある者、不起訴処分を得た経験のある者など、経験豊かな弁護士が揃っております。刑事関係でお悩みの場合には、ぜひ躊躇せず、当事務所までご相談下さい。
なお、相談方法については、相談の仕方のページをご参照下さい。当日相談も承っております。
(弁護士費用)※各消費税抜
着手金 20万(税込22万)円~(標準30万(税込33万)円〜40万(税込44万)円)
成功報酬 20万(税込22万)円~(標準30万(税込33万)円〜40万(税込44万)円)