遺産分割調停の流れと上手く進めるコツ
遺産分割目次
遺産分割調停の流れ
現在の実務では、遺産分割調停は段階的な進行で行われることが多いです。
まず、
①相続人の範囲
②遺言書の有無
③遺産分割協議書の有無
④遺産の範囲
⑤遺産の評価
⑥遺産総額・具体的相続分の確定
⑦遺産の分割方法の調整
という流れで行われることが一般的です。
遺産分割は複雑な法律問題をはらんでいることに加えて、当事者間の感情的な対立が激しい場合も多いです。上記のような段階的な進行を辿っていくことで早期に解決できることが期待されています。
一般的な遺産分割調停では、①から③までは当事者間に争いがないことが多いので、1回目の期日では④遺産の範囲から話し合っていくことになります。なお、④遺産の範囲について争いがある場合には、民事訴訟(遺産確認訴訟など)で解決を図る必要があります。そのため、この部分について争いがある場合には、一旦調停は取り下げて、遺産の範囲を確定させてから、再度、遺産分割調停を申し立てるよう促されることになります。
④遺産の範囲が確定すれば、今度は⑤遺産の評価について話し合っていくことになります。
不動産がある場合
遺産の中に不動産がある場合、⑤遺産の評価が争点になることが多いです。当該不動産が空き家であれば、相続人で共同して売却することが多いので問題になることはあまりありません。しかし、相続人の誰かが住んでいる場合や単独で取得することを希望している場合には、当事者間の対立が激しくなります。
一般的には、申立人及び相手方双方から査定書を出し、その中間位で調整していくことが多いですが、場合によっては、調停手続きの中で不動産鑑定を行うこともあります。ただ、その場合、鑑定費用を予め裁判所に納める必要があり、これを誰が出すかで揉めることも多いです。鑑定費用は鑑定対象の不動産の数によりまちまちですが、どんなに少なくとも数十万円単位になります。そのため、「鑑定費用を出すくらいなら、このくらいの金額で折り合いを付けよう。」という発想も必要になるでしょう。
その後
当事者間で⑤遺産の評価について合意できれば、⑥遺産総額・具体的相続分の確定作業に入ります。ここでは、主に「特別受益」や「寄与分」について話し合いが行われます。詳細は別稿をご参照下さい。⑥遺産総額・具体的相続分が確定すれば、あとは⑦遺産の分割方法の調整(誰が、どの遺産を取得するか)という話し合いをしていくことになります。
調停を上手く進めて行くために気を付けること
これまで述べたように、調停では段階的に争点を協議していき、合意してく作業になります。双方、思うところがあるでしょうが、早期解決を願うならば、譲歩できる部分は譲歩するのが得策です。
また、調停は毎回2,3時間程度しか時間が取れないので、自分が主張したい点は予め書面にして裁判所と相手方に読んでもらいましょう。時間の節約にもなり、期日では有意義な話し合いができます。ちなみに、感情的な文章はお勧めしません。提出した書面は相手方も読むので、感情的な対立を激化させることになってしまうからです。書面には、自分の主張を裏付ける「事実」を記載し、それを証明できる証拠をつけるようにしましょう。
これらの主張や証拠は、調停が不成立になった場合の審判の際の材料にもなります。何を証拠に出すかも含めて、慎重な検討が必要です。
これまで述べたように、遺産分割調停は話し合いの場で、主役はあくまでも当事者の皆様です。自分の力で話し合いを進めて行かなければなりません。自分だけでは不安という方がいらっしゃいましたら、まずはお気軽に川崎ひかり法律事務所にご相談下さい。