逸失利益の賠償方法に関する重要な最高裁判例(令和2年7月9日) |川崎で交通事故に強い弁護士への相談

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逸失利益の賠償方法に関する重要な最高裁判例(令和2年7月9日)

このコラムで分かること!
①後遺障害の逸失利益の定期金賠償
②定期金賠償のデメリット

1 画期的な最高裁判決

2020(令和2)年7月9日に交通事故に関する画期的な最高裁判決が出ました。後遺障害による逸失利益について定期金賠償を認めるという判決です。では,どのような点が画期的なのでしょうか。

2 後遺障害による逸失利益とその算定方法

後遺障害による逸失利益とは,後遺障害が発生したことにより,労働能力が低下したため,将来にわたって減少するであろう収入等の利益のことを言います。そして,交通事故=不法行為の損害賠償は,一時金として賠償することが原則とされていましたので,逸失利益の算定においては,将来得られるであろう総収入額から,先払いで得をする利息分を差し引くことが行われていました。この差し引かれる利息のことを「中間利息」といいます。

3 中間利息とは

では,中間利息は何パーセントなんでしょうか。この点は,民法に定めがあり,2020年3月までは5パーセント2020年4月以降は,3年ごとに見直されるとされているものの,現状は3パーセントとされています。例えば,5パーセントの時代だと,10年間で3分の1ぐらい,20年で40パーセント近く減る計算となっていました。しかし,現在のこの超低金利時代。いくら先払いと言っても,引かれすぎだとは思いませんか。

4 本判決の内容

とすれば,一時金じゃなくて,毎月でいいから,その代わり,中間利息を引かないでくれと言いたいところです。この点が争われたのが,本件事例でした。保険会社側が一時金であり,中間利息が差し引かれるべきだと主張したのに対し,被害者側は定期金で受け取れる,だから,中間利息は差し引かないで賠償すべきだと主張したのが本件訴訟でした。そこで,最高裁は,どのように判断したかというと,民法は一時金にしなくちゃいけないとは言ってないだろ!とし,毎月の定期金での支払を認めたのです。

5 本判決の重要性

これまで,逸失利益は一時金として請求するのが当然でした。中間利息がめちゃくちゃ差し引かれるなと思いつつも。。。この最高裁判例が生まれたことにより,中間利息の問題を解消することができるようになりました。

6 定期金賠償のデメリット

定期金賠償のデメリットとしては,加害者側の経済状況が悪くなると定期金の支払いが滞る可能性があります。保険会社が定期金を支払う事案であっても,その保険会社が何十年後も存続しているのかは不透明です。

また,民事訴訟法第117条には

 「口頭弁論終結前に生じた損害につき定期金による賠償を命じた確定判決について、口頭弁論終結後に、後遺障害の程度、賃金水準その他の損害額の算定の基礎となった事情に著しい変更が生じた場合には、その判決の変更を求める訴えを提起することができる。ただし、その訴えの提起の日以後に支払期限が到来する定期金に係る部分に限る。」

と規定されています。この規定に従って,将来著しい事情の変更が生じた場合は,定期金賠償の変更を求める裁判が起こされるリスクがあります。

 

一時金か定期金かは被害者の側で選択できるので,デメリットも十分考慮して慎重に選択しましょう。定期金賠償等でお困りのことがあったら,交通事故事件に詳しい川崎ひかり法律事務所にご相談ください。

 

この記事を監修した弁護士

坂本 正之(神奈川県弁護士会所属)

市民のために開かれた法律事務所を目指して、当事務所を設立しました。法律事務所の門を叩かれる方は、大きな不安を抱えている方ばかりです。親身なリーガルサービスにより、そのような方々の支えとなり、1つでも多くのトラブルを解決していきたいと思っております。

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