人身傷害保険の有効な活用を!
任意保険保険坂本正之過失相殺1 過失相殺
交通事故の被害に遭った場合でも,加害者の過失が100%ということは少なく,
被害者側にも一定の過失が認められることが多いです。
例えば,
被害者に発生した損害が100万円,
加害者側の過失8割,
被害者側の過失2割というケースだと,
被害者は加害者に対して100万円の8割である80万円しか損害賠償を請求することができません。
これを「過失相殺」と言います。
2 過失相殺の判断基準
では,過失相殺における過失割合ってどうやって決めるんでしょう。
これについては,
「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」
という東京地裁(民事交通訴訟研究会)が編集した権威ある本があり,裁判実務はこれに従っています。
この本は,事故の類型ごとに過失割合を明示しております。
概ね,妥当な数値を示していると言えますが,
例えば,道路外から道路に進入するために左折してきた四輪車と自分が運転する四輪車が衝突した場合でも,
基本的には自分にも2割の過失が発生します。
筆者もヘビードライバーですが,脇から出てきて衝突したのに,
何でこっちに2割も過失があるの???
と言いたくなります。
3 人身傷害保険の活用
そこで,活用すべきは人身傷害保険です。
人身傷害保険とは,
記名被保険者およびその家族が,
契約の車等に搭乗中や歩行中などの自動車事故で死傷した場合に、
保険金が払われる保険で,
事故の際の過失割合に関わらず,人身傷害保険の基準で計算した保険金が支払われる保険です。
すなわち,自分に過失があっても,減額されることなく,一定の金額がもらえる保険なのです。
しかも,歩行中でももらえるんです。いい保険ですよね。
4 人身傷害保険のココがすごい!
さらに,この人身傷害保険のすごいところは,
人身傷害保険から支払われたお金は,
自分の過失分に充当されるところなんです(最判平成24年2月20日参照)。
どういうことかと言うと,先の事案で,人身傷害保険から50万円の給付を受けたとします。
この20万円は,先に被害者の過失2割に充当されますから,
被害者の方は,20万円を回収しているにもかかわらず,
さらに,加害者側の保険会社から,100万円-20万円=80万円を回収できる
ということになります。
そして,人身傷害保険の20万円と加害者側の保険80万円を併せて100万円となり,
見事,損害全額を回収した!となるのです。
但し,人身傷害保険の活用により回収できるのは,損害全額までで,
それ以上にもらえるというわけではありませんので,この点ご注意下さい。
5 人身傷害保険は「特約」
そんなこと言われても,人身傷害保険なんて入ってないよ~!
という方もいらっしゃると思います。
でも,本当ですか???人身傷害保険は自動車保険の特約なのです。
しかも,人身傷害保険の付保率は,今や70%を超えています。
自動車保険に加入する際に,気付かないうちに入っていることが多いのです。
人身傷害保険に加入しているかどうかわからない人は是非,保険会社に確認してみて下さい。
この記事を監修した弁護士
坂本 正之(神奈川県弁護士会所属)
市民のために開かれた法律事務所を目指して、当事務所を設立しました。法律事務所の門を叩かれる方は、大きな不安を抱えている方ばかりです。親身なリーガルサービスにより、そのような方々の支えとなり、1つでも多くのトラブルを解決していきたいと思っております。