妊娠中に交通事故に遭ったときに気を付けること
交通事故一般妊婦栁町大介被害者1 はじめに
もし,あなたが妊娠中に交通事故に遭った時は、あなた自身のこと以上に,お腹の中の赤ちゃんのことが心配ですよね。以下,そのような場合にどんなことに気を付けるべきかをアドバイスしていきます。
2 事故直後の対応
(1)警察への通報!
まずは,必ず110番通報して下さい。これは,事故の程度がどんなに軽くてでもです。
交通事故の場合,事故直後には体に何の異常がなくても,事故から数日後にあなた自身や赤ちゃんに何らかの異常が現れる場合があります。
そして,事故直後に警察に通報しなかった場合、後日発生した症状と交通事故との間の因果関係が争われる可能性があります。
そのため,事故直後には,面倒でも,必ず警察に通報して下さい。そして,警察官や加害者にあなたが妊娠中であることを必ず伝えて下さい。
(2)すぐに病院へ!
交通事故に遭った場合,あなた自身に目立った外傷が無くても,必ずすぐに病院に行きましょう。
そして,病院に行った際には、①交通事故に遭ったことと②妊娠中であることを必ず医師に伝えて下さい。
妊婦さんの場合,あなた自身のお怪我の治療に色々な制約があります(投薬治療やマッサージ・電気診療の制限等)。なお,妊婦の場合,レントゲン検査を制限する病院もありますが,医学的には問題ないとされています。もっとも,ご不安な場合は,医師に相談しながらあなたにとって適切な治療方法を選択するようにして下さい。
また,赤ちゃんへの影響としては,
- ①腹部圧迫による切迫流産や早産
- ②腹部打撲による胎盤早期剥離
- ③腹部への衝撃による子宮破裂
- ④胎児母体間輸血症候群
- ⑤胎児自身の骨折や頭蓋内出血
等が考えられます。いずれも専門的な治療が必要になりますので,まずは,赤ちゃんに異常がないか,必ず産婦人科で検査するようにして下さい。
3 示談交渉は赤ちゃんが生まれた後でするのが鉄則!
示談交渉は,赤ちゃんが生まれた後でして下さい。生まれる前に示談を成立させてしまった場合,赤ちゃんが生まれた後に何らかの後遺障害が発生しても,その分の損害賠償請求が出来なくなってしまう可能性が高くなってしまいます。
保険会社によっては,言葉巧みに早急に示談を成立させようとするところもありますが,毅然とした態度で拒否しましょう。
なお,以前は,交通事故による人身傷害の場合の損害賠償は,原則として交通事故発生から3年以内にしなければなりませんでしたが,民法改正に伴い,原則として交通事故発生から5年以内にすればよいことになりました(改正民法724条の2)ので,慌てる必要はますますなくなりました。
4 あなたがもらえる損害賠償の範囲
まず,通常の交通事故の場合と同様,①治療費,②入通院慰謝料,③通院交通費,④休業損害等があります。不幸にも後遺障害が残ってしまった場合には,⑤後遺症慰謝料や⑥後遺症による逸失利益も請求できます。詳しくは,別コラム(交通事故の加害者に請求できる主な損害項目)をご参照下さい。
この中で,妊婦さん特有のものとしては,以下の場合が想定できます。
(1)流産してしまった場合
不幸にも流産してしまった場合には,①及び②が加算されることになります。①については,流産したことに伴う医療に掛かった実費が加算されます。また,②については,あなたが被った精神的苦痛に対して慰謝料が加算されることになります。どの程度加算されるかは,初産かどうか,臨月かどうか等の個別事情によって変わってきます。一般的には,初産や臨月の方が高額になると言われています。
(2)切迫早産の場合
交通事故が原因で切迫早産になったと医師が判断した場合,切迫早産の治療が終わるまでの期間もあなた自身の治療期間として通院慰謝料が支払われることになります。
(3)赤ちゃんに後遺症が残ってしまった場合
赤ちゃんが生まれた後に、後遺障害が残ってしまい、それが交通事故と因果関係があると判断されると,赤ちゃん自身の損害として,治療費等の他,⑤後遺障害慰謝料や⑥逸失利益を請求することが出来ます。もっとも,交通事故と赤ちゃんの後遺障害との因果関係の立証は困難であり,医師の協力が不可欠です。このような意味でも,事故直後に病院に行って,しっかりあなた自身と赤ちゃんの検査をすることが大切になります。
5 最後に
このように妊婦の方が交通事故に遭った場合,通常の交通事故と比べて色々と複雑な問題があります。お腹の中の赤ちゃんのためにも,信頼できる弁護士に相談すべきです。是非,交通事故事件に強い川崎ひかり法律事務所へご相談下さい。
この記事を監修した弁護士
栁町 大介(神奈川県弁護士会所属)
皆様が体調がすぐれない場合、病院にいくように、法律的なトラブルに巻き込まれた場合には、信頼できる弁護士に相談するのがベスト の方法です。「こんな事を弁護士に相談するのは気が引けるな。」と思われるかもしれません。しかし、些細なことから後々の大きな問題に発展することが多く 見受けられます。私は、地元川崎で、かかりつけの医師のような、身近な弁護士を目指しております。症状が悪化する前に、どうぞお気軽にご相談ください。