頚椎(腰椎)捻挫における整骨院(接骨院)通院の注意点
むち打ち坂本佳隆後遺障害はじめに
交通事故により、頚椎(腰椎)捻挫と診断された被害者が、整形外科と同時並行的に整骨院へ通院するケースが、実務上しばしば見受けられます。そのような場合の基礎知識や注意点を説明します。
整骨院とは
まず大前提として、整骨院は、病院ではありません。整骨院で受けることができるのは、医師の治療ではなく柔道整復師などによるマッサージなどの物理療法・施術になります。そのため、診断書も作成されません。
整骨院のメリット
整骨院(接骨院)は、駅から近いなど立地が良く、また比較的遅くまで営業しているので通院しやすい。病院に比べて長い時間待たされることもないし、マッサージなど直接的に施術をしてくれるので、何となく神経症状の緩和に効果があるように感じやすいなどといったメリットがあります。そのため、被害者の方、特に日中働いている方は、病院より、整骨院での施術を選択する傾向にあります。
整骨院のデメリット1-施術費用の注意点
そもそも整骨院は病院ではないため、保険会社が整骨院の施術費を支出してくれない。また、裁判になった後に、整骨院の施術費用の必要性・相当性が激しく争われるといったリスクがあります。
では、整骨院の施術費用が認められるためには,どのような要件を満たす必要があるのでしょうか?様々な考え方がありますが、主に次の4つの要件が必要と言われています。
(1)施術の必要性
この要件については、原則として、医師の指示や承諾が必要とされています。そのため、整骨院に通院する前に整形外科医に相談し、整骨院通院の指示ないし承諾を得るようにしましょう。
例外として、医師の指示・承諾がなくとも治療効果があった場合は、必要性が認められやすくなる傾向にあります。
(2)施術内容の合理性
施術部位と交通事故による負傷部位が一致していることが必要です。交通事故による負傷部位と整骨院での施術部位を一致するように注意しましょう。
(3)施術の相当性
施術の相当性は、更に施術期間の相当性と施術費用の相当性に区分されます。
施術期間の相当性とは、受傷内容、治療経過、疼痛の内容、施術の内容及びその効果の程度等から、施術を継続する期間が相当であることを意味します。施術期間が、医師の診断による加療期間を超える場合などは注意が必要です。なお、施術期間の目安として6か月を一応の目安にしたらどうかとの意見もあるところです。
施術費用の相当性とは、報酬金額が社会一般の水準と比較して妥当なものであることを意味します。施術費用が、整形外科における治療費の何倍にも上るような場合は,注意が必要です。
(4)施術の有効性
施術を行った結果、症状の緩和が見られる場合です。
この有効性の要件も医師の指示がある場合は、原則として認められる傾向にあります。
5 整骨院のデメリット2-後遺障害等級認定の際の注意点
頚椎(腰椎)捻挫で神経症状が残存し、後遺障害の等級を認定してもらう際に、後遺障害等級14級と認定されるためには、病院に対し一定以上の通院頻度・通院回数が必要になります。ところが、整骨院は病院ではないため、整骨院へ頻繁に通院していたとしても、病院に同程度通院していた場合に比べて不利益に評価されてしまうリスクがあります。
そのため、整骨院のみではなく、同時並行的に病院へも一定以上の頻度・回数で通院するようにしてください。
6 おわりに
整骨院へ通院は、メリットだけなくデメリットもあります。そこで、交通事故被害に遭い整骨院へ通院されている方は、後で不利益を被らないために、早めに川崎ひかり法律事務所の弁護士にご相談下さい。
この記事を監修した弁護士
坂本 佳隆(神奈川県弁護士会所属)
私のモットーは「挑戦」です。弁護士登録以来,大きい事件も,小さい事件も,時には他の弁護士が断るような困難案件なども,断らずに受任し,コツコツ研鑽を積んで参りました。私のところに相談にくる方は,非常に困難な問題に直面し,心身ともに疲弊している方も少なくありません。私は,そのような依頼者の方の話を良く聞き,時には冗談を言い合いながら, 一緒になって困難な問題を早期に解決していければなと思っております。お困りの際は,是非一度,ご相談下さい。